学校訪問 − おかやま山陽高校 ― セブ島修学旅行

フィリピンのセブ島に3年連続でクラス単位の修学旅行に行っていただいているおかやま山陽高校にお邪魔してきました。この学校のモットーは「持ち味教育」です。学園長の原田三代治先生によれば、「個性とはその人の持っているもののすべて、持ち味とはその中からその人にとっても社会にとっても役に立つもの、有益なものを選び、伸ばしたものを指す」とおっしゃっています。マイスタースクールという独自の教育制度でユニークな人材を送り出している秘密を解くために、その中でセブ島への修学旅行がどんな影響を与えているのかを知りたくて原田先生にお話を伺いました。

そもそもの話は「何もなくて豊かな島」という崎山克彦氏の著書を原田学園長が読まれたことから始まります。カオハガン島というセブの小さな島を崎山氏が購入、そこに住む村人たちとの交流を通して素晴らしい関係を作り上げていくプロセスが書かれています。その島に原田学園長が行かれたことから、おかやま山陽高校の修学旅行がスタートします。

そしてその修学旅行の中から正にフィリピンの真髄をついた作文が発表されました。

伊藤梨乃さんという生徒さんですが、岡山の弁論大会で一位、全国大会で二位に輝きました。その全文をここに掲載させていただきます。

「サラマー」 

おかやま山陽高等学校 三年 伊藤 梨乃

「サラマー、サラマー」

と言う小学生に囲まれた私は、嬉しいような恥ずかしいような不思議な気持ちで笑っていました。

昨年の十二月、私は「何もなくて豊かな島」と呼ばれ、東京ドームと同じ位の面積に五百人程が住むフィリピンのカオハガン島に修学旅行で行くことになりました。私は何もない島に行く意味が分からず、行きたくありませんでしたが、何が豊かなのか知りたいという気持ちと子供たちに文房具を寄付する目的もあり参加したのです。

 カオハガン島は透き通った青い海に囲まれ、真っ白な砂浜が印象的でした。車や機械の音はなく、波の音、小鳥のさえずりや澄んだ空気に包まれていました。そこにあるのは、雨水を利用した公衆トイレと竹で編んだ小さなロッジ、そして、夜に利用するランプだけでした。水道も電気もない、そんな不便な生活を強いられている島の人々を私は「可哀想な人」と同情の目で見ていました。

そんな気持ちのまま小学校を訪問すると、暗い教室で四十名程の子供達がとても明るく生き生きとした顔で勉強していました。そして、私達が持参したペンやノートを大事そうに皆で分け合い、現地のビサヤ語で「ありがとう」という意味の「サラマー」と言って、笑ってくれたのです。その言葉に私は急に心が温かくなりました。

自由時間になり、私は散策に出かけましたが、浜辺で綺麗な貝殻を探している間に友達とはぐれてしまったのです。携帯電話もなく連絡を取る手段のない環境で、不安と孤独感に襲われ、こんな何もない島に来たことを後悔しました。砂の上は歩きにくく、大声で名前を呼んでも返事がありません。すると、その様子を見た島の人が次々と集まり、友達の名前を一緒に呼び続けてくれたのです。その時、私は「可哀想な人」という偏見が消えていくのを感じました。そして、やっと友達に会えた時の安堵感は今まで経験したことのないものでした。一緒に探してくれた人は、まるで自分の事のように喜んでくれ、その時、人とのつながりの大切さと島の人々の温もりを感じ、これがこの島の豊かさなのだと思ったのです。そして、私は思わず「サラマー、ありがとう」と叫んでいました。

今日本では、夢や人生の目標を持たず「頑張っても報われるとは限らない」と悲観的な考えを持つ人が増え「国民が考える自分の幸福度」は百七十八カ国中、九十五位だと報じられています。私達は目を輝かせて生きることを忘れかけているのではないかと思います。

カオハガン島の人々は、果物や犬の肉を料理して皆で分け合い、家族を大切にし、少しのことにでも喜びを見出し、子供達の眼は皆キラキラと輝いていました。私はそれまで些細なことにも不平不満ばかりを口にし、感謝の気持ちを持たず、人に対する思いやりや優しさが欠けた生活をしていたように思います。

私はこの修学旅行で「本当の幸せは何か」ということと「ありがとう」という言葉の大切さを教わりました。その生活の中で、私は何もない環境の中で生活してみることも意味があると思いました。不便な生活の中で、生きる方法を自分で考え、感謝の心を芽生えさせ、生活への工夫や生きることの素晴らしさを見つけることができたのです。そして、不自由な生活の中で人と協力することや支え合うことの大切さも分かりました。

私は、カオハガン島で貧しい子供達に文房具を寄付してあげるという思いで行った修学旅行でしたが、反対に人の心の温もりと感謝の気持ちで生きることの大切さを教えてもらいました。

幸せとは、自分の価値判断で決まるものであり、心の持ち方だと思います。そして、それは「ありがとう」という気持ちから始まると思うのです。将来私は、生きることの素晴らしさと心の豊かさを教えることのできる教師になりたいと思っています。そして、私はそんな気持ちにさせてくれたカオハガン島の人々に「サラマー、ありがとう」と言いたいのです。

今回、おかやま山陽高校にお邪魔して、原田三代治学園長にお会いできたことをとてもうれしく思っています。原田先生はとても上品でユニークで確かな信念を持たれた先生でした。私もこんな先生に習ったら人生がきっと変わっていただろうと思わせる素晴らしい教育者でした。そしてこのような先生の教育がこの素敵な生徒さんを生んだのだということを実感しました。そしてこの素晴らしい作文が生まれた土壌には、セブ島修学旅行という行事が確かに介在していたということに、原田学園長に感謝の辞を述べさせていただきたく思います。

追記

原田学園長への質問と答え

1.フィリピン(セブ)を選んだ理由

  小説家崎山克彦さんの「何もなくて豊かな島」と読んで感銘して是非

  この島を訪れたいと思った

2.出発の準備はどの様にしましたか

  下見に原田学園町が自ら行かれて確認しました

3.具体的に滞在中どの様な事をしたか

  6時間の英会話学校での英会話学習、カオハガン島で島民との交流、

4.最も良かった事は何か

  日本より貧しいが陽気で温かいフィリピン人の人柄に触れ合った事

5.言葉など不便はなかったか

  英語は基本的に誰でも理解できるのでそれ程不便はなかった

6.国際交流はいかがでしたか

  島内で道に迷って不安になった生徒が、その後の島民の協力で解決した。

  このことを通してフィリピン人の国民性がよく理解ができた。

7.英語学校はいかがでしたか

  6時間の学習ですが学生は英会話の重要性がよく分かった。

8.旅行中生徒の反応(評価)は

  貧しくても明るく生きているフィリピン人の国民性に驚きと感銘を受けました。

9.貴校がこだわった点は

  本当に為になる教育旅行であれば前例にはとらわれなく勧めて行く。

   

10.成功の秘訣は

   自信を持てるような情報収集の上に計画